社長メッセージ

 書物というものは文化であり思想であり、書物なくしては文化国家たり得ない重要なものです。しかし、“紙の本”が過渡期にあることは、出版業界に興味のある皆さんはすでにご承知のことだと思います。

 いまいちばんのテーマは、デジタル化であることは間違いありません。しかし、光文社は闇雲にデジタルにとらわれることなく、紙の強みを発揮できるもの、デジタルと並列していくもの、これまで築き上げてきた雑誌のブランド力を使ってリアルを生み出すもの…と、媒体によって、多角的にイノベーションを起こしていく意識で取り組んでいます。ひとつの例が、VERYがブリヂストンとコラボした電動アシスト自転車「HYDEE.B」です。またVERYはフェス、Martではワークショップ、光文社新書、古典新訳文庫のイベントなど、「紙」を飛び出したリアルな事業を続々と展開しています。

 それは翻って考えると、読者目線を第一にした雑誌作りをしてきたという光文社の強みがあるからこそなのです。私も女性自身で長く編集者をやっていましたが、まず一にも二にも「読調(読者調査)」だと叩き込まれました。読者の声を聞け、と。これは、女性自身に始まり、その後のJJ、CLASSY.、VERY、STORY、HERSと、女性誌の伝統に脈々と繫がっています。

 読者目線での編集がブランド力となり、本当に読者が求めているものはなにか、読者によりよい生活を送っていただくために我々はなにができるかという思いが、変革を起こす強いモチベーションとなっているのです。ですから、雑誌、書籍というコンテンツだけにとらわれずに発信していくことにも興味を持っていただきたいと思っています。

 私は、自分の経験から、編集者というのは媒介者であると思っています。文芸の世界ではよくありますが、隠れていた才能を発掘することもそうですし、面白い雑誌や記事を作って新しい読者を発見することもそうです。自分が受け取った刺激と刺激を結びつけて、そのままだと1と1でしかないものを50にも100にもできるのが編集者です。

 日々の仕事をただこなしていくだけならば簡単です。でも、目の前の締切りに間に合わせる義務感だけでは、この醍醐味を味わうことはできません。「いいページ、いい本を作りたい」「読者を、世の中を驚かせたい」というエネルギーを自分のなかで燃やさないと、この仕事はしんどいです。でも、それがうまく嚙み合ったときの喜びは、やってみなければ感じることができない大きなものとなるのです。

 光文社は次の時代に向かって新しい出版、新しいコンテンツの姿を作ろうと考えています。その点では若い人の力が主導権を握って、引っ張ってくれることを期待しています。「なんか面白そうだから、足、前に出しちゃった」というくらい好奇心旺盛で、なんでも楽しく面白がれる皆さん。ぜひ、光文社でその一歩を踏み出してください。