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INTERVIEW
書籍/文芸編集部
園原行貴
(2008年入社・デスク)
作家さんや装丁家さん、イラストレーターさんなど、クリエイターの方から素晴らしい作品や制作物をいただいたときの高揚感。それは、以前もいまも、なにものにも代え難いやりがいです。「おぉ…!」と思いがけず声を漏らすことも(周囲の人は迷惑かも)。経験を重ねるほど作品などを仕上げていただくまでの過程はスムーズになり、企画にも幅が出てきたように思います。15年の蓄積をどう生かすか考えることも、いまのやりがいのひとつです。
アイデアや企画を、年齢や立場を気にせず発信できて、なおかつ通しやすいところ。所属する文芸編集部の会議は、いい意味でリラックスした雰囲気があり、臆面もなく自分の考えを口に出せます。それを周りの方が無下にしないあたたかさもあります。多彩な部署が存在するのもおもしろいと思います。雑誌編集部やコンテンツ事業部など視野の異なる部署と連携を取ることも間々あり、思いも寄らぬ知見や刺激を得ることがあります。
いくつもありますが、例えばそのうちのひとつは、湊かなえさんの『ポイズンドーター・ホーリーマザー』(光文社文庫)の刊行に携わったことです。当時は文庫編集部に在籍し、文庫の制作を担当しました。折しも湊さんの作家デビュー10周年を記念しての出版社10社による47都道府県サイン会ツアーがおこなわれていたときで、光文社の担当する北関東や東北の書店さんに同行。サイン会に訪れた読者の皆さんの熱量を目のあたりにし、湊さんとその作品の凄さをあらためて実感しました。
自分の「おもしろい」に正直な人。そんな後輩のアイデアが実り、鈍器にもなりかねない巨大な本が出来たり(平山夢明さんの『俺が公園でペリカンにした話』特別巨大版)、プロモーションの一環で東野圭吾さんの作品の登場人物を声優の方に演じてもらったりもしました(東野圭吾さんの「ブラック・ショーマン」シリーズ)。自分の価値観に寄り添って行動できる人は、仕事をする上でも強いと思います。
願わくば、引き続き小説の編集に携わっていたいです。業界の厳しさは承知していますが、一方で、その頃にはいまはまだ見ぬベストセラー作品や注目作家も生まれているはずです。そんな作家さんや作品に、編集者の立場でも向き合えたらワクワクしていられると思うので。そして、おこがましいかとは思いますが、その営みが、小説のおもしろさや魅力を、より多くの人に伝えるための一助になったらいいなと思います。